SASAKI Hiroshi Floodeur
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Posté le: 28 Avr 2007 04:07 Sujet du message: 『中国思想のフランス西漸』
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『中国思想のフランス西漸(1・2)』、後藤末雄=著、矢沢利彦=校訂、平凡社、2003年。
七十数年前に、書かれた論文(改訂・増補・復刻版)の紹介です。たいへん独創的な論文だと思います。いま2巻目を読んでいる途中ですが、ヨーロッパがアジア(特に中国)へ「進出」した当初から、中国思想や文化が、ヨーロッパへと「逆に」伝播したことを、論述しています。
たいへん立派な、学問的業績だと考えます。先達(先学)に敬意を表したい。
以下は、参考のため、『中国思想のフランス西漸(2)』、後藤末雄=著、矢沢利彦=校訂、平凡社、2003年の、本文からの抜粋です。
古来、中国では完全に信仰の自由が認められていた。中国に
は祖先教、儒教以外に仏教、喇嘛教が信奉され、かの基督教
は、一六九二年康熙帝時代に公許された。「信仰の自由の使
徒」と呼ばれたヴォルテールはこの点において、全く中国の法
制に魅惑されたのである。殊に雍正帝は「日本における基督教
徒の叛乱」に鑑み、宣教師の異教不認容主義が内乱を醸成する
ことを憂慮し、断然宣教師を駆逐した。この皇帝こそ政治と信
教とを識別し、全然この両者を分離することが出来たのであっ
た。換言すればヴォルテールの理想は、中国皇帝によって実現
されたのである。それ故、彼は雍正帝の宣教師に与えた勅言を
賛美し、帝をもって「神が人間に与えた名君のひとり」とまで
激賞したのである。
私の列挙した中国文明の特徴、道理の尊重、迷信の絶無、賢
明な専制政治、法制に現われた仁愛の観念、道徳の奨励、平等
の精神、信仰の自由は、皆ヴォルテールの精神であり、その提
唱であった。そして中国思想がヴォルテールの生前から耶蘇会
士によってフランスに西伝されたこと、また彼が著書中で中国
の文物制度を賛美すること、殊に彼の提唱の多くが中国思想と
合致することに立脚して、この社会哲学者の意識中に中国思想
の影響を認めるものである。(122pより)
引き続き、以下は、『中国思想のフランス西漸(2)』、後藤末雄=著、矢沢利彦=校訂、平凡社、2003年の、本文から、抜粋したものです。
かくの如く中国文化はフランスに紹介され、百科全書家に接
触すると同時に、フランスの学会に進出して遂に支那学が成立
し著名な中国学者を生じ、中国人をもってエジプトの植民なり
と断定する暴論まで、学会の大問題をなしたのであった。それ
故、ルイ十四世がフランス耶蘇会士を中国に差遣した学問的大
命が完全に成功した許りでなく、中国とフランスとの思想的接
触はフランス文化そのものの革新に資益したのであった。恐ら
くルイ十四世は、かかる結果を来たそうとは夢にも思わなかっ
たであろう。実際、この大王は学問を愛してこれを保護しなが
ら、学問の進歩によって人知が進歩し、延いて人間生活の革新
を促すべき事理を理解していなかったのである。(306pより)
学問の進歩が重要なのは、まったく同感です。まだ全てを読んだわけではありませんが、中国の「易姓革命」思想も、フランス革命の、思想的背景にあるのかも知れません。 |
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